University of Tsukuba Rugby Football Club

第2回「残り10分」

第2回「残り10分」

 

 

ワールドカップの熱狂が筑波ラグビーにも。ラスト10分の熱い戦いを観た。

 

日本中が熱狂したワールドカップが閉幕し、国内のラグビーシーズンが再び動き出した。

筑波大学ラグビー部もここからは“負ければ終わり”の戦いに突入。

一戦一戦で、まさに「勝ち切る力」が問われることになる。

 

連日、日本代表選手がメディアに登場し、

いまだ興奮冷めやらぬ感もある国内のラグビー熱。

各地のラグビースクールなどでも、

新たにラグビーを始めたいとグラウンドを訪れる人が後を絶たないと聞く。

 

そんなワールドカップの余波は、大学ラグビーにも

いい影響を与えているのではないか、、、そう実感している。

 

1117日。筑波大学ラグビー場で行われた、ジュニアの流通経済大学戦。

非常に熱い試合を見ることができた。

双方ともに、勝てば昇格戦に臨む権利を得る。

負ければ、今年度のジュニアの戦いが終わる。

試合はまさに手に汗を握る展開となった。

 

ラスト10分間の攻防は、ワールドカップの熱気に勝るとも劣らない時間だった。

率直な感想は“いいものを観て感動した”だった。

両チームの選手に敬意を表したい。ラグビーは本当に素晴らしい。

 

 

 

ワールドカップが閉幕した直後の114日。筑波大学は帝京大学と対戦。

この試合では、5点リードで残り10分を迎えた。

結果、ラストワンプレーでトライを奪われ、大逆転されての敗戦。

勝てば、大学選手権出場に大きく近づく試合を落としてしまった。

 

ただ、筑波大学が敗れたものの、

この試合の感想も率直に“いいものを観て感動した”だった。

最後の熱い攻防があった。

攻める帝京大学、守る筑波大学。

両チームとも集中力を切らさず、ロスタイムを含めて後半50分以上を戦い抜いた。

 

ラストトライはコーナーポスト際だった。

この段階で同点。

右キッカーにとってはもっとも難しい角度からのゴールキック。

さらに直前のやや簡単な位置からのキックは外していた。

そんな状況の中、帝京大学のキッカーはしっかりと冷静に決め、大逆転勝利に導いた。

このキックシーンだけを観ても、非常に価値のある時間だった。

 

FWの近場をしっかりと守り中央へのトライを許さなかった筑波。

FWにこだわらず、バックス展開で勝負、一発で取り切った帝京。

そして素晴らしいゴールキック。濃密な時間だった。

 

筑波にとっては、もしかしたら悔いの残る敗戦。

最後に勝敗を分けたものは…

何を“チェンジ”すべきか…

その悔しい想いをその後の日々で積み重ねたことが、

1117日の流通経済大学戦につながったのかも知れない。

 

 

流通経済大学戦は追う立場だった。

残り10分で1421の7点差。

3トライでの引き分けでは許されない。

カテゴリー1への挑戦権を得る1位突破に向けては、

少なくとも“2チャンス”が必要な状況だった。

2チャンスを作れなければ、ジュニアチームの戦いは終わる。

 

残り10分間の攻防。

筑波大学最初のトライは36分。

ゴールキックも決まり同点となったが、残り4分であとワンチャンスが必要。

一方、流通経済大学も置かれた状況はまったく同じだった。

このまま引き分ければ、両チームともに次はない。

 

ロスタイム。

敵陣ゴール前。

筑波ボール。

 

追う側と追われる側、立場は違えど、

2週間前の帝京戦と同じシチュエーションが巡ってきた。

 

流通経済大学の粘りのディフェンスは素晴らしかった。

ペナルティでも勝負が決まる場面。

決して反則することなく、増え続ける近場でのフェイズを耐え続けた。

 

スコアした時間は、筑波ラグビー部公式ツイッターによると、後半45分。

筑波はフォワードで取り切り大逆転勝利。カテゴリー1への挑戦権を得た。

 

勝ち切れた原因は何か…

何がチェンジできたのか…

どちらの試合の答えも、これからの日々で探していくことになるだろう。

確実なのは、ただ漫然と過ごしていれば、勝利はやってこなかった事実。

2019年のチーム発足当初から積み上げてきた、日々の取り組みが、

最後のトライにつながった。そう信じたい。

 

 

 

2019年シーズンでは試合前後のレビューを充実させるなど、

広報委員会のメンバーを中心に、発信に力を入れてきた。

その目的の本質は、チーム強化につながるアプローチだった。

指導スタッフや主力メンバーらの分析を、

公式ホームページでの発信を通じて、メンバーで共有することこそが、

最も大切な役割だった。

 

またチームとしては「4年生のひとこと」を始めたと聞く。

毎練習後に、4年生が一人ずつ、今の自分の想いを話しているという。

 

ワールドカップでは「ONE TEAM」という言葉がクローズアップされたが、

ここ筑波のグラウンドにも「ONE TEAM」はあった。 

ラグビーの技術・戦術を磨くことはもちろん、

チームのためのあらゆる取り組みが、

最後に結実するはずだ。

ワールドカップでの日本代表の活躍がそれを教えてくれた。

 

対抗戦2試合。ジュニアの入れ替え戦。大学選手権決勝までの4試合。

残りの試合数は、7試合。すべてが負けられない戦いだ。

 

大学の関係者はもちろん、

ワールドカップから始まった“にわかファン”の皆様も、

是非、筑波大学の試合を観戦してほしい。

 

彼らは最後まで決してあきらめない。

ラスト10分の攻防を幾度となく経験したこのチームは、

人々の心に届く熱い戦いを、

これからもきっと魅せてくれるはずだ。

 

 

筑波大学ラグビー部 統括ディレクター

増田尚志(OB 所属:テレビ大阪)

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