1月2日(月)に国立競技場にて、大学選手権の準決勝である帝京大学戦が行われました。
5-71 LOSE
レビュー担当:吉廣広征
〈試合総評〉
帝京大学は個々の能力の高さがよく注目されますが一番の強みは組織としての強さです。
アタック、ディフェンス、セットプレーのすべてにおいて鍛えられた選手たちが規律を持ってプレーするところに最大の強みがあります。個人的には、映像を見れば見るほど埼玉ワイルドナイツにとても似ているなと感じていました。
その帝京大学に対して筑波大学でどうやって勝つか。
ポイントは
- 接点
- Dゾーンでプレーしないこと ※Dゾーンとは:自陣22m~トライライン
この二つが及第点に達すると今の筑波の勢いとやってきたことを鑑みて絶対にいけると考えていました。
実際に試合はどうだったのか。
上記2つのポイントを中心に振り返りたいと思います。
- 接点について
これは及第点に達していたと思います。アタックでは対抗戦での対戦よりラック成功率は上がっていましたし、ディフェンスでもあれほど帝京大学が接点で後退するシーンは今シーズンなかったのではないでしょうか。特に前半28分の楢本鼓太朗(人文4年・修猷)のタックル、ターンオーバーシーンはその象徴ともいえます。ただ総じて帝京大学はラックを乗り越えさせない強さがありました。こちらが2回連続で接点を押し戻せてもしっかりキープして組み立てる強さが帝京大学にはあったので、天理大学戦、東海大学戦でラックを乗り越えてターンオーバーできたシーンが今回は作り出せませんでした。
- Dゾーンでプレーしないこと
ここが一番きつかったところです。Dゾーンでプレーしないためには
・アタックで簡単なミスをしないこと
・ペナルティを侵さないこと
がとても重要ですが、試合開始のキックオフでミスが起こりそのあとすぐにペナルティとなり、結果試合開始から1stトライまでの10分間ほぼDゾーンで過ごしてしまいました。
なぜDゾーンでプレーをしてはいけないか。単純に点数を取られるリスクが大きいというだけでなく常に休む間もなくMAXでディフェンスしないといけないため消耗が激しいからです。他のエリアと違い、モール、スクラム、ディフェンスライン、どれも少しの前進も許されません。例えるならマラソン中にダッシュをするイメージです。序盤にこの時間が長ければ長いほど後半にかなり響いてきます。前半頑張るけど後半だめだよね。とラグビーでよく聞く話ですが至極真っ当なことです。さらに連戦続きでメンバーもほぼ固定されているチームはなおさら顕著にこの傾向が出ます。精神論ではなく勝手に体が力尽きてしまうのです。
ここ数試合文字通り本当にバチバチし続けてきた筑波大学に前半早々のDゾーンでの戦いはかなり堪えました。その結果、徐々に相手がトライするまでにかかる攻撃時間が減っていき失トライが一気に増えていったという試合展開になってしまいました。
ただ悲観すべきことばかりではなく収穫もありました。ダッシュすれば止められる域に来たということです。
これから先ベスト4の壁を超えるためにはダッシュできる時間を伸ばすかダッシュしなくても止められるようになるかどちらかしかありません。
身をもって体感した3年生以下の部員がどのような意識でこれから筑波の地で取り組んでいくのか非常に楽しみです。
想定していたゲームのポイントに対するレビューは以上になりますが、想定していなかった最大の誤算はアタックの時間が少なかったことです。正確には自信を持っていたセットプレーからの攻撃の精度が低くなってしまった点です。
筑波は代々セットプレーからのアタックに強みを持っているので帝京大学戦に向けての1週間もかなりセットプレーの確認に時間を費やしました。しかしこの試合セットプレーからのアタックはうまくいかず、その結果、意図的にアタックの時間を短くしたのではなくミスでアタックができなかったという状況に陥りました。
総ラック数について見てみると公式戦で勝った試合はすべて50回以上あり50回未満の時はすべて負けてしまっていました。今回45回なので50回未満となっています。
ラックが増えればそれだけでいいということはありませんが、いいアタックを続けることは点数を取る上で重要ですし何よりそのアタックを継続できている間はディフェンスする必要がないため一番いいディフェンスはいいアタックを継続することです。
最初に私がグラウンドでバックスのみんなに伝えたのは「もっと自分自身の能力に自信をもって積極的にアタックしてほしい」ということでした。社会人で今まで多くの新人選手を見たり対戦してきましたが、贔屓目無しで客観的に見て筑波の学生たちはもっと個人でも勝負できると感じていましたし、実際春の試合をすべて映像で見たあとは、その思いがより強くなりました。
接点に強みがあり、個々の能力でも劣っていない場合、もう少し積極的に継続してアタックしたほうが今後もっと筑波の強みが出てくると思いますし、見ている方だけでなくプレーしている学生自身がもっと楽しくなるのではないかと期待しています。
〈印象に残ったプレー〉
前半28分、楢本鼓太朗(人文4年・修猷館)のタックル。
「あっ、この試合まだまだいけるな」とみんなにエナジーを取り戻してくれたスーパープレーでした。映像見返せる方はぜひ見てください。
〈MOM〉
楢本兄弟
兄 鼓太朗(人文4年・修猷館):上記のスーパービックタックル。
弟 幹志朗(体育1年・東福岡):シーズン通して一番成長したと思います。
能力があり有名選手だったかもしれませんが本人は一から学び直しているところだと思います。早稲田戦の前半とはもう別人になっていました。
もちろんこれからますます努力してくれるだろうという期待も込めて。
〈楢本鼓太朗(人文4年・修猷館)のコメント〉
この度は、MOMに選出していただきまして、誠にありがとうございます。とても光栄に思います。
今シーズンのスローガン「バチバチ」のもと、帝京大学戦は、天理大学戦、東海大学戦同様にAT、DF共に接点を前に動かし、ファイトし続けることを意識して臨みました。また、東海大学戦から1週間後が試合ということもあり、グラウンド外でもリカバリーやケアを徹底して行い、挑んだ試合でもありました。
結果としては、71-5と大敗で、目標である「日本一」を達成することはできませんでした。
その中でも、試合を通して接点で返すことは、この試合でも通用する部分が多々あり、今後の筑波に繋がる試合であったと思います。
しかし、その接点を80分間し続けることや、スクラムなどのセットプレーは課題として明確となったので、来年への修正点だと思います。
以上で、試合の振り返りは終わりますが、最後にこの場を借りて、シーズン終わりの思いを書かせていただきたいです。
試合前に筑波のOBやファン、保護者の方に沢山の応援メッセージをいただきました。また、昨シーズンから今シーズンにかけて多くの企業の方にスポンサーとして、付いていただいたり、朝食プロジェクトでも、糸井さんをはじめとした多くの方に支援をしていただいたりしました。改めて多くの方の支えがあってこその木原組が「日本一」を目指せる環境であることを強く感じました。応援していただいた方々、誠にありがとうございました。そして、今後とも応援のほどよろしくお願い致します。
来年以降も筑波大学ラグビー部は「バチバチ」を体現しつつ、新たなチームカラーを纏って戦うと思います。筑波の試合を見て、何かしらの支援をしたい!スポンサーとして筑波大学ラグビー部と関わりたい!という方がいらっしゃいましたら、以下のメールアドレスまでご連絡のほどお願いします。また、この筑波の「バチバチ」を見た多くの中高生が、筑波を目指し、筑波ボーイズとして活躍することを祈ってこの文章の締めとさせていただきます。
tsukuba.rugby.management@gmail.com
(筑波大学ラグビー部主務:4年 楢本鼓太朗)
〈楢本幹志朗(体育1年・東福岡)のコメント〉
MOMに選出していただきありがとうございます。
前年度王者の帝京大学にチャレンジャーとして出し惜しみすることなく、持っているもの全てだそうと試合に臨みました。しかし試合を通して、フィジカル、スキル、全てにおいて帝京大学に上回られたことが敗因であると考えます。
今シーズンを振り返ると、夏合宿を終え日本一と言う目標の中始まった対抗戦。開幕から4連敗という不甲斐ない結果、その結果以上に納得いかない自分のパフォーマンスに悩まされる日々でした。しかし、コーチ陣の方々のアドバイスや、ミスをしても顔色変えずDFで取り返してくれるFW、プレーのすれ違いに多少ぶつかり合いながらも話し合いを重ね、修正しようとするBK、そして何より、苦しい時期も懲りずに10番として起用し続けてくださった嶋崎監督のおかげで8年ぶりの年越しを経験することができたと思います。
この1年間、木原主将を始めとする4年生の方々には多くのことを学びました。この試合もトライを取られた後に、下級生が下を向く中、4年生は常に前を向き自分たちを鼓舞し続けてくれました。試合後も、自分たちが1番悔しいはずなのに下級生に「来年は俺らを超えてくれ」と励ましてくれました。そんな4年生達だったからこそ木原組はここまで成長できたと思います。大学ラグビー1年目からこんな素晴らしいチームでプレーできたことは誇りです。
今シーズン筑波を応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
3年生以下はこの結果に誰も満足はしていません。また1からチームも個人も見直し、来シーズンは必ずこの結果を超えます。
応援よろしくお願いします!
〈新人賞〉
濱島遼(体育1年・福岡)
派手ではないかもしれませんが「すごくいい選手」です。
無意識に気が利くプレーヤーで、こういった選手はどのカテゴリーでもコーチ陣にとってはありがたい存在ではないでしょうか。
みんなから若干いじられすぎている気もしますがこれから身体も大きくして発言力も増して4年生のころには筑波のベン・スミスと言われているのではないかと思います。
〈濱島遼(体育1年・福岡)のコメント〉
この度は新人賞に選んでいただきありがとうございます。
体育専門学群1年の濱島遼です。
この1年は個人的に環境が大きく変わった1年であり、練習や試合では先輩方のバチバチについていくことで精一杯でした。そのような中でしっかりと目標を持ち、試合を重ねていく中で役割を見出せたのは、同期や先輩方、スタッフの皆さんからいい刺激をいただいたからです。ありがとうございます。
これからもバチバチの精神を持ち続け、自分の武器である諦めない気持ちに磨きをかけていこうと思います。
応援よろしくお願いいたします。
〈特別賞〉
松島聡(体育4年・大分舞鶴)
最後まで怪我との戦いでしたが圧倒的精神的支柱でバックスのみんなを引っ張ってくれました。彼無しで後輩たちの成長はなかったと思います。本当にありがとう。
〈松島聡(体育4年・大分舞鶴)のコメント〉
このような賞を頂き、ありがとうございます。
私は2021年の対抗戦敗戦からBKが変わらなければ筑波は勝てないという使命感を持ってリーダーになりました。練習を重ねる中で、上達している実感はあるものの、試合では思うようにいかず、リーダーとして焦る時期もありました。しかし、最終的には外へ運ぶ能力やボールの繋ぎの部分、DFにおいて私がラグビー部に所属した4年間で最高のチームになったと思います。これは、私の力ではなく、コーチ陣の指導、才能ある後輩達の努力、そして何より試合に出られない中で対戦相手の仮想チームを引っ張ってくれた4年同期、児玉(体育4年・福岡)と四谷(体育4年・豊多摩)のおかげだと思います。本当に感謝しかありません。
後輩達も4年生が少ない中で、良く体を張って付いてきてくれました。本当に頼りになる後輩達でした。個性しかない後輩達がこれからどうなっていくのかが楽しみです。
最後に、私自身もコーチ陣や後輩、同期無くしてはこの結果はありませんでした。本当にありがとうございました。
〈嶋﨑監督のシーズンを通してのコメント〉
日頃より筑波大学ラグビー部を応援していただいている皆様、誠にありがとうございます。木原組は対抗戦5位、大学選手権ベスト4という結果でシーズンを終了しました。昨シーズンの悔しい結果からスタートし、9月からの対抗戦4連敗を乗り越え、この結果を残してくれたことを本当に誇らしく思います。
特に4年生は人数が少ないながら、新チームスタートから先頭に立ち、様々な変化や取り組みに対しても前向きに、そして主体的に取り組んでくれました。公式戦で活躍した者はもちろんですが、陰でクラブを支え、発展させてくれた者達がいなければ、この結果やチームの勢いはなかったと思います。そんなたくさんの力があったおかげで、グラウンドではシーズンが深まるにつれ、「バチバチ」のスローガンの如く、チーム内の攻防レベルが近年ない程向上し、「本気のやり合い」が体現できていました。また熱量だけでなく、我々のスタイルを各カテゴリーの選手が発揮しており、11月中盤から1月2日までチーム全体の成長度は素晴らしいものでした。
木原組は筑波大学ラグビー部に様々なことを残してくれました。それと同時に、準決勝で大敗という悔しく、大きなお土産をもらいました。この差を埋めるべく、来シーズンは下級生達が様々な面で奮闘してくれると期待しております。
最後になりますが、今シーズンの木原組はチーム内外の多くの方のご支援や応援を得て、この結果を残してくれました。皆様のご支援や応援が様々な形で我々のもとに届き、何度も背中を押していただくことを経験しました。皆様には感謝しております。来シーズン、さらにチームとクラブを発展させていくために、さらに多くの力が必要だとも考えております。来シーズンも引き続き、筑波大学ラグビー部の力になっていただけると幸いです。よろしくお願いします。
監督 嶋﨑達也
〈最後に〉
クラウドファンディングにてラグビー部専用ウエイト場設置にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
ウエイト場があったから勝ち抜けたという世界ではありませんが、間違いなく学生の力になったと思っております。何よりも学生たちがその思いを忘れずにこれからもバチバチやってくれるのではないかと思っております。
今年は筑波大学ラグビー部への支援体制を大きく変革すべく動いておりますので今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。
吉廣広征
レビュー編集担当:西舞衣子