『アスレティックトレーナー熟考~日本のATの創成期と将来~』
日本におけるアスレティックトレーナーの草分けとして数々の競技現場で活動し、多くのトップチームやプロ選手に携わってこられたJSPO-ATマスターである白木先生から、これまで、そしてこれからのATについて、またAT活動への一貫した熱い想いをご講演いただきました。
日本のATの創成期については、1978年頃~1990年代、まさに筑波大学におけるアスレティックトレーナー活動の歴史であり、筑波大学でATを学べることの意義を実感するものでした。
ATの理想像については、選手に寄り添い、選手と共に実践を行ってきた白木先生ならではの見解がまとめられていました。その中でATによるアスリートサポートとは、保有資格や担当競技種目で分化はされるものの、基礎知識や技術は共通なものを取得し、その上で各人の専門分野を中心に分化し、コーチ・選手・ドクターと連携して選手の競技力を最大限に向上させていくものである、というお考えを述べられました。メディカル分野として捉えられる事が多いATの中で、“アスリートのためのAT”の考え方を示してくださったことは、将来ATを目指している学生にも現役ATにも、心に残る貴重な道しるべとなる内容でした。
講演後の質疑応答では、学群1年生から「アーチェリーのようなマイナー競技におけるAT活動の必要性」について質問があり、白木先生は「姿勢の維持や体の使い方などの指導、あるいは繰り返し動作によるアンバランスを観察する目としてなど、ATの役割はある」と回答され、運動部学生のAT活動を後押ししてくださいました。
セミナー後の参加者の声から、「選手とのコミュニケーションの重要性を再認識した。これからの活動でも選手から話を引き出せるように頑張っていきたい。」「医療系資格を持っていない自分がトレーナーとして今後どのようにしていく必要があるか考えさせられた。」「将来トレーナーになろうか迷っているタイミングでこのお話を聞けて良かった。」など、白木先生の長年の活動とその裏付けからくるATとしての考え方に多くの影響を受けたセミナーとなったようです。
白木先生が示してくださった『ATに対する私見』
ATの選手に対する基本的に役割は「トリガー(引き金)」だと思っている。実際に身体を動かすのは、選手なのだ。選手がトレーニングの目的と手段を自ら「選び」能動的に関わらなければ、効果は期待できない。 ATは、そのためにトリガーとして、理論に基づいて正しい情報、選択肢、処置のしかたを提示し続ける役目だと認識している。その情報の量と質、経験に基づく対応力によってATの評価が下される。 |